はい、今回は兵庫県宝塚市にある「天満神社古墳(てんまんじんじゃこふん)」を紹介します。タイトルにあるゴーランドとは、イギリスの冶金技師である、ウィリアム・ゴーランド氏のこと。
そんな冶金技師であるゴーランド氏と天満神社古墳にはどのようなつながりがあるのか?その真相を探るべく、兵庫県宝塚市にある「天満神社古墳」へ行ってきました。
天満神社古墳とは
天満神社古墳のある、兵庫県宝塚市に来ています。宝塚市には中山寺古墳や中山荘園古墳など、古墳時代後期に多くの古墳が築造されました。これら古墳時代後期の古墳の大半は、長尾連山に存在します。

長尾連山にはいくつかの群集墳が存在しましたが、その多くは開発などにより消滅。現在は、中筋山手古墳群、中筋山手東古墳群が一部保護されて見ることができます。

天満神社古墳も群衆墳の一つで、山本古墳群C群に属しています。ちなみにA~C群までありますが、大半は消滅しており、古墳らしい姿で見ることができるのは天満神社古墳のみ。
そんな訳で、長尾連山の古墳を巡りながら天満神社古墳へ。天満神社古墳は、その名の通り、天満神社の隣に存在します。天満神社古墳の属する山本古墳群C群には、天満神社の北側に1基、南東に3基、計4基の古墳が存在したようです。そのうち3基は既に消滅したとのこと。
とりあえず古墳へ行く前に、天満神社でお参りを済ませます。天満神社という名前の通り、祭神は「菅原道真」。地元では「西の宮さん」と呼ばれており、東の「松尾神社」と並ぶ神社とのこと。

参拝を終えて、目的の天満神社古墳へ。天満神社古墳は、本殿西側の駐車場の一角に存在します。途中、境内に「行基の投げ石」というものを発見。

案内板には下記のように記載されていました。
(前段省略)あるとき行基がこの地を通りがかり、道を塞いでいたこの石を杖で投げ飛ばしたとされる。行基の高徳ぶりがうかがえる伝承である。
いや、杖でこの巨大な石を吹き飛ばすとか、高徳とかいうレベルを超えてるんじゃないでしょうか。ただこの辺には古墳がいくつかあったので、もしかするとこの巨石も古墳に使用されていた石材なのかもしれません。
投げ飛ばされた可哀想な石を後に、天満神社古墳のある神社の駐車場へ。なかなか見つからずキョロキョロしていると、ようやく古墳らしきものを発見。

洞窟かな?
古墳時代後期の古墳と言えば盛り土があり、横穴式石室が開口するイメージですが、天満神社古墳は崖に小さな穴が空いている風にしか見えません。しかも入口の周囲は、ビッシリと雑草が茂っており、入口が隠れ気味。

天満神社古墳は、6世紀末頃に築造された直径14m、高さ5mの円墳。封土においては東、西、南とも削られており、原型は保っていません。特に南側は大きく削られており、羨道の一部が失われています。ちなみに、入口は柵が設置されているため、中に入ることはできません。

葺石、埴輪、周溝などの外部施設については不明。埋葬施設は、開口部を南側に向けた両袖式の横穴式石室。石室規模は、玄室2.72m、羨道5.24mで全長8.16mを測ります。

この天満神社古墳ですが、明治時代に来日した冶金技師の「ウィリアム・ゴーランド」が調査した可能性が高いと考えられています。ゴーランド氏は造幣局に招聘された技術者ですが、日本の古墳を広く調査した人物としても知られています。

大英博物館には、ゴーランド氏が「Yamamoto Dolmen」と書いた陶棺片が所蔵されています。このYamamoto Dolmenというのが「山本古墳群」であると考えられています。ゴーランド氏は山本古墳群のある古墳を調査して、その古墳の石室規模を記録に残しています。この記録の数値が天神神社古墳の規模と近いようです。おそらく、この陶棺片も天神神社古墳から出土したものではないかとのこと。
そんな訳で、ゴーランド氏が調査したかもしれない古墳ですが、残念ながら中に入ることもできず、柵の隙間からスマホで撮影するしかできません。崖の洞穴にかぶりついてる姿は、もう不審者以外の何者でもないので、とりあえず帰ることにしました。
まとめ

今回は、兵庫県宝塚市にある「天満神社古墳」を紹介しました。かのゴーランド氏が調査したかも知れない古墳ですが、行ってみると入られない茂みの洞穴でした。ただ内部は比較的良好な姿で残されているようなので、いつか公開されることを願うばかりです。
そんな訳で、天満神社古墳の紹介はこの辺で。次回はまた別の、ゴーランド氏が調査したかもしれない古墳を紹介します。
天満神社古墳
古墳名 | 天満神社古墳 |
別名 | 無し |
住所 | 兵庫県宝塚市山本西1丁目5−33 |
墳形 | 円墳 |
直径 | 14m |
高さ | 5m |
築造時期 | 6世紀末頃 |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 横穴式石室(両袖式) |
石室規模 | |
出土物 | 陶棺片 |
指定文化財 | 無し |
参考資料 | ・宝塚市史 ・関西学院考古No.9 ・兵庫県宝塚市白鳥塚古墳・山本古墳群 |