はい、今回は大阪府和泉市にある「聖神社1号墳(ひじりじんじゃいちごうふん)」を紹介します。フェンスが張り巡らされた古墳は多数存在しますが、こちらの聖神社1号墳は、かつて見たことの無いほど厳重なフェンスが張り巡らされたバリケード古墳となります。
神社の境内にある最強のバリケード古墳があると聞いたからには、見に行かずにはいられません。そんな訳で、大阪府和泉市にある「聖神社1号墳」へ行ってきました。
聖神社1号墳とは
聖神社1号墳のある、大阪府和泉市に来ています。和泉市の古墳といえば、全長94mの規模を誇る「和泉黄金塚古墳」や、100基ほどの古墳で構成された「信太千塚古墳群」が知られています。

聖神社1号墳は、信太千塚古墳群のある信太丘陵から西へ伸びる丘陵上に存在。1号墳という名の通り、周辺には複数の古墳が存在し「聖神社古墳群」といわれています。ただ現在は開発などにより、1号墳を除き全てが消滅。
そんな訳で、和泉市南部の古墳を巡りながら聖神社1号墳へ。聖神社にも駐車場があるようですが、道が少し狭そうな雰囲気だったため、手前の「信太の森ふるさと館」に車を駐車。ちなみに信太の森ふるさと館のある公園には「姫塚古墳」の石室が移設保存されています。

信太の森ふるさと館から5分ほど歩くと、聖神社の鳥居が見えてきました。聖神社は927年に編纂された、延喜式神名帳に記載された式内社。社伝によると657年に天武天皇の勅願により、この地を本拠地とする「信太首(しのだのおびと)」が創建したと伝わっています。

鳥居をくぐり境内にはいると、聖神社の拝殿が見えてきました。和泉国三宮とされる格の高い神社ということで、敷地も広く社殿も立派な造り。

資料によると聖神社1号墳は、参道西側の雑木林に存在するとのこと。しかし行ってみると雑木林はキレイに伐採されていました。どうやらスズメバチが出没して危険だから伐採したとのこと。大変よろしいですね。


ただ、目的の聖神社1号墳がなかなか見つかりません。おかしいなとキョロキョロしていると、どうやらこの目の前にあるのが、聖神社1号墳のようです。

完全なバリケードですね
古墳の周囲に柵が巡らされることはよくありますが、石室の開口部をこのような姿で塞いだ古墳は初めて。おそらく墳丘に上ると落下する危険があるためかと思いますが、ビジュアル的にはインパクトがあり過ぎます。バリケードの周囲には、若木が植樹されていました。ゆくゆくは、これらの木々で周囲を包囲するつもりなのでしょうか。

聖神社1号墳は6世紀末頃に築造された、直径約30m、高さ約1.5mの円墳。遺物については盗掘を受けており殆ど失われていますが、須恵器の台付長頸壺と高杯などが見つかっています。

埋葬施設は、南側に開口する両袖式の横穴式石室。資料によると、玄室は長さ3.55m、幅2.1m、高さ約2mを測ります。羨道は、幅約1.3m、高さ約0.7mですが、石積みのあるのは玄室より約2mまでしかなく、そこより南は地山を幅約1m、深さ約0.6m掘り込んで、裾部まで続いているとのこと。また羨道部底面には、排水溝が備え付けれていたようです。フェンスの隙間にスマホを入れ、ギリギリ石室が確認できました。

聖神社1号墳の特徴として、玄室と羨道の間に、高さ1.65m、幅約25cmの板石が左右に置かれていること。この板石の床面上には96cmの部分で約10cmの切り込みが存在します。ただ、この切り込みがどのような役割を果たしたかについては分かっていません。このような形態を持つ横穴式石室は大阪には存在せず、和歌山の古墳に見られる特徴とのこと。

聖神社1号墳は巨石が用いられていますが、和泉市の横穴式石室では小・中型石材が用いられるものが多数を占めています。これは、和泉市ではあまり大きな石が存在しなかったからとも。そんな中、板石や巨石を用いた横穴式石室を有していることから、被葬者は紀伊国とのつながりを持つ、かなりの有力者であったのかもしれません。

ちなみに1号墳とつくように、かつて周辺には複数の古墳が存在したようです。聖神社1号墳の北側にある鳥居前にも、かつて聖神社2号墳が存在しました。聖神社2号墳は、7世紀初頭頃に築造された直径約30mの円墳と考えられています。2号墳の特徴として「カマド槨」という埋葬施設を2基有していた点にあります。

カマド槨は、木材で墓室をつくり外部を粘土で覆い、遺骸をいれてから火葬にし堅い墓室を焼きあげる埋葬施設とのこと。西槨で3体、東槨で8体、合計11体の火葬された遺骸のあったことが確認されています。このような形態から聖神社2号墳は、「かまど塚」「窯槨墳」とも言われています。ただそのような古墳ですが、残念ながら現地には何の痕跡もありません。

1、2号墳共に大変珍しい古墳ですが、一方は完全バリケードで一方は完全に消滅しています。神社の境内で謎のバリケードを激写しているのも意味がよく分からなくなってきたので、とりあえず帰ることにしました。
まとめ

今回は、大阪府和泉市にある「聖神社1号墳」を紹介しました。雑木林にある古墳と思いきや、まさかの完全バリケード古墳でした。玄門の両端に板石が設置されるという関西では珍しい古墳なので、もう少し周知されてもいい古墳ではないでしょうか。今後どのように整備されていくのか注目したいところです。
そんな訳で、聖神社1号墳の紹介はこの辺で。次回はまた別の、茂み古墳と思ったら完全なバリケード古墳を紹介します。
聖神社1号墳詳細
古墳名 | 聖神社1号墳 |
別名 | なし |
住所 | 大阪府和泉市王子町1116−19 |
墳形 | 円墳 |
規模 | 直径約30m |
高さ | 1.5m |
築造時期 | 6世紀末頃 |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 横穴式石室(両袖式) |
石室規模 | 玄室:長さ3.55m、幅2.1m、高さ約2m |
指定文化財 | 無し |
出土物 | 須恵器(台付長頸壺・高杯) |
参考資料 | ・和泉市ガイドブック : 地歴小辞典 ・和泉市風土記 2 ・和泉市史 第1巻 |