はい、今回は奈良県広陵町にある「新木山古墳(にきやまこふん)」を紹介します。新木山古墳は宮内庁により「押坂彦人大兄皇子(おしさかのひこひとのおおえのみこ)」の陵墓参考地として管理されています。
押坂彦人大兄皇子は敏達天皇の長男で、後裔には舒明天皇や天武天皇を輩出するなど、現皇室の祖ともなる人物として知られています。
そんな高貴な人物の墓かもしれないと聞いたからには、確かめずにはいられません。という訳で、奈良県広陵町にある、新木山古墳に行ってきました。
新木山古墳(三吉陵墓参考地)とは
新木山古墳のある、奈良県広陵町に来ています。広陵町は奈良県でも古墳の多い地域で、特に奈良の三大古墳群の一つ「馬見古墳群」が存在することでも知られています。新木山古墳は、馬見古墳群「中央群」の南部に位置し、周辺には中央群の盟主墳である「巣山古墳」を始め、多くの古墳が存在しています。
という訳で、近くにある竹取公園の駐車場に車を停め、新木山古墳へ。竹取公園のすぐ隣に広陵町の図書館があるのですが、そこで変わった自動販売機を見つけました。
自動販売機というと一般的にはドリンクなんですが、こちらでは「靴下」が売られていました。ここ広陵町は国内での靴下生産量がトップクラスの町として知られています。とはいえ、自動販売機で靴下を買いに来る人なんているのでしょうか…「あっ、靴下切らしてるわ、ちょっとそこの自動販売機で買ってくるか」というシチュエーションになったことがないので分かりません。
謎の靴下販売機を後に、新木山古墳に向かって歩いていくと、右側に整備された古墳を発見。こちらは「三吉石塚古墳」という、全長45mの帆立貝形古墳。新木山古墳の外濠に接し、主軸は新木山古墳と同じ方向となっています。
距離的に新木山古墳の陪塚に見えますが、築造時期が新木山古墳の築造時期と少しズレているため、関係性は不明。この三吉石塚古墳の東側に横たわる巨大な古墳が「新木山古墳」になります。
新木山古墳は、5世紀前半に築造された全長200mの前方後円墳。馬見古墳群中央群においては巣山古墳(204m)に次ぐ巨大古墳です。
前方部を東に向けた古墳で、周辺から二上山の大阪側から運ばれたと思われる葺石が見つかっています。盾形の周濠を有していますが、現在、一部は埋め立てられています。
新木山古墳は宮内庁により「三吉陵墓参考地」として管理されているため、中に入ることはできません。宮内庁には新木山古墳から出土したという、勾玉、管玉、棗玉が保管されています。後円部の墳頂に盗掘坑が確認されており、埋葬施設は竪穴式石室と考えられています。
被葬者は不明ですが、宮内庁は「押坂彦人大兄皇子(おしさかのひこひとのおおえのみこ)」の墓の可能性があるとしています。押坂彦人大兄皇子は敏達天皇の第一皇子でしたが、当時は蘇我氏の勢力が強かったため、蘇我氏の血を引かない押坂彦人大兄皇子は皇位に就くことはできませんでした。
押坂彦人大兄皇子が活躍したのは6世紀ですが、新木山古墳が築造されたのが5世紀前半なので時代があいません。現在、押坂彦人大兄皇子の墓としては、同じ広陵町にある「牧野古墳」が有力候補とされています。
という訳で、古墳の周囲をぐるっと回って見ます。奈良県遺跡地図によると、この奥あたりに新木山古墳の陪塚らしき古墳が2基存在するようです。ただ、近くまで行ってみましたが、痕跡は見つからず。
こちらが新木山古墳の前方部。とはいえ中に入ることができないので、茂みしか見えません。
こちらが古墳の南側になります。濠は埋め立てられ、空き地になっており、遠目から謎の茂みを見つめるしかありません。茂みファンには絶好の茂みスポットといえるでしょう。
後方部には宮内庁の看板が設置されているので、この細い道の先に見に行ってみます。宮内庁が管理する古墳へ行くたびに思うのですが、どこもかなり分かりにくい場所に置かれています。
こちらが宮内庁の案内板。とくに形式通りの文言で、陵墓参考地名が書かれているだけです。古墳の奥を覗くことができましたが、完全に茂み祭りでした。
古墳沿いに歩いていると、神社らしき建物を発見。しかし祭神が書いてない上、神社名すら書かれていません。
謎の神社を過ぎ、少し歩いていくと大きな池が存在。おそらくこれは、濠の名残ではないでしょうか。ここから見える姿が一番古墳らしい姿となっています。濠にしては幅が広いので、後世にため池として拡張されているのかもしれません。
ちなみに新木山古墳は、全国で36番目に大きい古墳になります。200mの前方後円墳ということで、押坂彦人大兄皇子の墓でないにせよ、大王級の墓である可能性は高そうです。
という訳でグルッと一周して、思う存分茂みを堪能することができました。もうこれ以上茂みを激写し続けても仕方がないので、とりあえず帰ることにしました。
まとめ
今回は、奈良県広陵町にある「新木山古墳」を紹介しました。残念ながら入ることはできず茂みしか見えませんが、フラッと茂みを見たくて仕方がない衝動に駆られたときには、おススメしたい古墳といえます。
そんな訳で、新木山古墳の紹介はこの辺で。次回はまた別の、入れない茂み巨大前方後円墳を紹介します。
新木山古墳(三吉陵墓参考地)詳細
古墳名 | 新木山古墳 |
宮内庁名 | 三吉陵墓参考地 |
住所 | 奈良県北葛城郡広陵町三吉 |
墳形 | 前方後円墳 |
全長 | 200m |
高さ | 19m |
築造時期 | 5世紀前半 |
被葬者 | 推定:押坂彦人大兄皇子 |
埋葬施設 | 不明 |
出土物 | 勾玉、管玉、棗玉、円筒埴輪 |
参考資料 | ・大和の古墳を歩く |