はい、今回は奈良県大和郡山市にある「笹尾古墳(ささおこふん)」を紹介します。古墳が公園や学校に保存されるケースはよくありますが、こちらの笹尾古墳は病院に保存されているという珍しい古墳です。
とりあえず、病院内に古墳が保存されていると聞いたからには、見に行かずにはいられません。そんな訳で、奈良県大和郡山市にある「笹尾古墳」へ行ってきました。
笹尾古墳とは
笹尾古墳のある、奈良県大和郡山市に来ています。大和郡山市北部には、独立墳が数期存在する程度で、古墳の数は多くありません。笹尾古墳の周辺には、古墳時代中期に築造された小泉大塚古墳と六道山古墳が存在するのみ。どちらも笹尾古墳の築造時期とは少し離れており、関係性は不明。

そんな訳で、周辺の古墳を巡りながら、笹尾古墳へ。道中、喫茶店らしい看板が目に入ったのですが、何故か逆さ文字。なかなかクセが強そうなオーナーがいそうです。

笹尾古墳の保存されている松籟荘病院は、矢田丘陵から西に伸びる尾根に存在します。ここに国立療養所が建設される際、笹尾古墳の存在に気づかれず、一時期埋め立てられていました。その後の増築工事の際に古墳の存在が確認されたため、調査が行われています。現在は、駐車場と病院の間にある斜面に保存。一応、見学していいらしいとの情報があったので、邪魔にならないように訪問させてもらいました。

そんな訳で、なかなかの坂道を上り駐車場付近に到着。古墳を探していると、矢印付きの大きい案内板が設置されていました。まわりは茂みしかないので、この看板のおかげで迷わずたどり着くことができます。

ちなみに同じ内容の案内板が古墳の手前にも置かれていました。茂みの方へいくと細い道があり、奥に石室の開口部を発見。

笹尾古墳は、6世紀末~7世紀前半に築造されたと考えられる、直径27mの円墳。発掘調査により、幅4mの空堀が確認されています。古墳時代後期の築造ということで、埴輪や葺石の存在は確認されていません。

埋葬施設は、南側に開口した両袖式の横穴式石室。花崗岩の巨石を用いた石室で、全長12.5mと大和郡山市では最大規模を誇ります。そんな訳で、石室内に入ってみることに。玄室につながる羨道は高さ1.8mとかなり高く、立ったまま入ることも可能。ただ羨道の天井石が一部失われているようです。

羨道の側壁と天井石を見ると、外側が平らになるように加工されていました。一般的な横穴式石室は、自然石を積み上げたものが多いのですが、このように加工された石材を用いた石室は多くありません。


こちらが玄室。高さは4.5mあり、かなりの広さ。奥壁は巨石を2段積み、側壁は4段積みで天井にかけて狭くなる持ち送りの構造。かつて玄室内には、二上山から産出した凝灰岩製の家形石棺が安置されていました。ただ石棺はバラバラになり、現在は失われています。副葬品は、須恵器が見つかっているのみ。石室の精巧さ、規模や凝灰岩製の家形石棺が用いられていることから、被葬者は身分の高い人物だったのかもしれません。

笹尾古墳では、平安時代から室町時代に祭祀の場としても利用されていたとのこと。羨道には木棺材や釘、大理石製の石帯などが見つかっています。おそらく、後世に追葬が行われていたとのこと。
そんな訳で、大和郡山市では唯一中に入れる石室ということで、見ごたえのある古墳でした。ただ、病院内にあるとはいえ人気のない石室に一人で入っていると、とんでもなく寂しくなってきたので、とりあえず帰ることにしました。
まとめ

今回は奈良県大和郡山市にある「笹尾古墳」を紹介しました。規模や精巧さという点で、とても見応えのある古墳といえるでしょう。
そんな訳で、笹尾古墳の紹介はこの辺で。次回はまた別の、病院内に保存された古墳を紹介します。
笹尾古墳詳細
| 古墳名 | 笹尾古墳 |
| 別名 | なし |
| 住所 | 奈良県大和郡山市小泉町 |
| 墳形 | 円墳 |
| 全長 | 27m |
| 高さ | 不明 |
| 築造時期 | 6世紀末~7世紀前半 |
| 被葬者 | 不明 |
| 埋葬施設 | 横穴式石室 |
| 石室全長 | 12.5m |
| 指定文化財 | なし |
| 出土物 | 須恵器 |
| 参考資料 | ・案内版 |
案内板
笹尾古墳
大和郡山市小泉町2815番地
本墳は、1981年11月に荘内の 宿舎建設中に発見され、翌82年2~5月に発掘調査が行われた。 幅2.0mの空濠がめぐらされた 径27.0mの円墳であり、内部に巨石横穴式石室が築かれている。玄室内には、二上山鹿谷寺付近に産する凝灰岩製の家形石棺が置かれていた。 石室は平安時代から室町時代にかけて墓や祭祀・信仰の場として利用されて おり、平安時代の木棺墓には、石帯がともなっている。副葬品は、須恵器のみであった。 古墳の築造時期は、出土須恵器から 推定して、6世紀末から6世紀前半 ごろに属する。
石室全長12.5m 墓道長4.0m 墓道幅2.5m 玄室長4.5m 玄室幅2.17~2.63m
玄室高2.2~2.6m 羨道長8.0m 羨道幅1.81~1.98m 羨道高1.7~1.85m
1996年4月 国立療養所 松籟荘
